Interview

社員インタビュー

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20年以上を経て、いまも追求する『ポケモン』の可能性

H.Y.

デジタルゲーム開発 PM ゲーム制作 プロジェクトマネージャー

子どものころから自らゲームを作り始め、『ピカチュウげんきでちゅう』を開発した有限会社アンブレラにて20年以上に渡り『ポケモン』シリーズの各種ゲーム開発のプロジェクトマネジメント(以下、PM)を務める。2020年にアンブレラがクリーチャーズと合併したタイミングで合流し、自らのプロジェクト管理に留まらず、社内PMのサポートなどを行っている。

2022年2月17日

作るのはゲームではなく、新たな価値を提案する「商品」

私のゲーム開発のキャリアは、1999年にアンブレラに入社したことからスタートしています。ニンテンドー ゲームキューブで発売した『ポケモンチャンネル~ピカチュウといっしょ!~』でPMを務めたことを皮切りに、ニンテンドーDSの『ポケモンダッシュ』、Wiiウェアの『みんなのポケモン牧場』、各種ハードやスマホアプリで発売した『ポケモンスクランブル』シリーズなど、常に新しいハードやコンセプトの挑戦的なプロジェクトでPMを務めてきました。小さな会社なので、マネジメントだけでなく、プログラミング、企画、ディレクションなども行いながら、最前線でゲームを作ってきました。

当時、元任天堂社長の岩田聡さんから「ゲームではなく商品を作りなさい」と言われたことは強く印象に残っています。すでに4~5本のゲームを出したころでしたが、完成度だけでなく「商品としてどのような価値をお客様に提案するのか」「どんなビジョンを持って送り出す商品なのか」を考え直すきっかけになり、その後のものづくりに大きく影響しています。

2020年の合併でクリーチャーズに合流し、環境も変わりましたが、基本的な役割は変わらずにやらせてもらっています。他PMのサポートも行っていますが、自分がメインとなるプロジェクトでは、多様な若手クリエイターと一緒にゲームや企画の開発を行っています。

磨き上げたコンセプトが、実装のクオリティを支える

ゲーム制作のプロジェクトマネジメントは、スケジュールや進行管理に留まらず、コンセプトから実装まで、クリエイティビティの隅々にまで関わっていく必要があります。ゲームの本質を掴んだ上で、その本質を左右するクリティカルパスについての目利きを行うことが重要です。実装部分は時間を掛けてブラッシュアップしなければいけないことが多く、その過程でコンセプトがずれていないか、時に一つ上の段階に立ち返って確認し、ゴールに向かって進めていきます。

商品のクオリティと、スケジュール通りに完成させることを両立させるとき、必ず取捨選択が発生します。もっとも大切な部分を残して優先順位を決めるときに、コンセプトが洗練されていなければ、大切な部分を取りこぼしてしまう。商品としての大きなズレを感じたときは単にスケジュールを伸ばすのではなく、「ここだけは守りたい」というコンセプトを伝えることが大切です。ゲーム制作のすべてのレイヤーを磨き上げていくことこそ、PMの役割です。

優れたクリエイターに力を発揮してもらえるよう、各メンバーが積極的にプロジェクトに関われる雰囲気づくりも心がけています。話すのが得意な人、苦手な人など個人に合わせてできる限り1対1で対話し、継続的に声を掛けることを意識しています。

過去の成功にすがることなく、常に「既視感」と戦う

アメリカに「ハンマーを持つ人にはすべてが釘に見える」という諺があるように、プロジェクトにおいても過去の成功事例に固執して思考停止に陥らないように注意しています。もちろん流行っていて新しいからいいというわけでもないですが、同じやり方にこだわりすぎてしまうと、時代に取り残されるのではないかという危惧があります。新しいゲームを作るのは新しいクリエイターです。プロジェクトメンバーの良いところを引き出せるよう、若手の意見や提案を積極的に受け入れて、自分のやり方やこだわりを押し付けないことを心がけています。

『ポケモンダッシュ』を出した直後、電車の中で一生懸命にニンテンドーDSをタッチペンでこすっている子どもがいました。もしやと思ってそっと画面をのぞいて、私たちの作ったゲームを何度もプレイしていたのを目にしたときの感動と、「ありがとう」の気持ちはいまも忘れられません。私はポケモンが大好きです。そして、ポケモンという一つの軸があるからこそ、アンブレラ時代からさまざまなコンセプトに挑戦ができました。どこかで見たようなものではなく、「こんなゲームもあるんだ」という可能性が広がるような商品を、ポケモンと、そしてクリーチャーズのメンバーと共に、これからも生み出していきたいと思っています。

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